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69 新年のごあいさつ

~2015 六甲全山縦走大会10回目制覇~

新年おめでとうございます。

新しい一年が皆様にとって佳き一年となりますよう、心からお祈り申し上げます。

ホームズ君シリーズも6年目に入りました。健康維持・増進と病気の予防・治療のため、身近な出来事をもとに情報発信を続けてゆきたいと考えています。これからも、ご愛読よろしくお願いいたします。

2015年11月23日。ホームズ君としては、記念すべき10回目の六甲全山縦走大会に参加した。

前日までの一週間は、11月後半にしては珍しく、気温20度前後の暖かく緩やかな天候が続いていた。ところが前日の予報によると、23日は西から天気が崩れて一日中雨。気象予報士の女性の「天気は一転して、冷たい雨になるでしょう」というコメントが、耳を刺すように響いた。

昨年・一昨年と抽選にはずれて参加できなかったが、3年前はその冷たい雨の中、低体温症で途中リタイアした。その苦い経験が、雨に対して過敏な反応を呼び起こすのだ。

あれは山頂近く、ガーデンテラス手前での出来事だった。急に全身から力が失われたような感覚に襲われ、足が上がらなくなった。寒さは全く感じていないのだが、脱力感で歩けなくなったのだ。

そのあと4kmもすると、宝塚へ向かう最後の12kmの山道になる。そこで動けなくなると、たくさんの方々に迷惑をかけることになると考えた。近くにいた神戸市のボランティアにリタイアを告げて、参加証を手渡した。

自宅に連絡し、車で迎えに来てもらうわずかな間に、日は暮れて辺りは真っ暗になってしまった。山頂周回バスの停留所で、他のリタイアの人たちと座っている間どんなことを考えていたのか、今は全く憶えていない。

さて話を戻そう。スタート地点の須磨浦公園には3時40分着。幸い雨は降っていない。スマートフォンでウェザーニュースの天気予報を見ると、神戸市は午前8時から降水確率40%。その後は一日中雨の予報だった。長田区の高取山あたりで雨だなと思った。

傘の使用は原則禁止だが、高取山から菊水山までの約1時間は市街地を歩く。その時に身体を濡らして体温を下げないようにと、リュックサックの傘を取り出しやすいよう一番上に入れ替えた。雨具が多くて今日の荷物は5kgある。重さへの不安も少し頭をかすめた。

今日の全山縦走のために、五峰山光明寺への山歩きを毎朝続けた。10月・11月は、全山縦走コースの一部を9時間ずつ3回歩いた。トレーニングの量は十分積んだと思う一方、最近2時間も歩くと、ふくらはぎがこむら返りを起こすのが不安材料だ。

天候や身体への様々な不安や自信が混ぜこぜになり、緊張感が増してくるのが自分でもよく解った。

5時過ぎ、まだ真っ暗な須磨浦公園を出発。ヘッドライトで足元を照らしながら黙々と旗振山へ登った。渋滞の中、栂尾山・横尾山を登っているうちに夜が明けた。

高取山を登りながら、歩いてきた須磨アルプスの方を振り返ると、曇天の下、明石海峡から淡路島まで見ることができた。西の方が見渡せるということは、当面雨が降る危険性は少なくなったということだ。

さらに長田区の市街地へ下る途中、これから先の難所の一つ菊水山が見えた。雲や霧がかかっていないことを確認できたから、六甲山の主峰に向かって600メートル以上の高山にも、雨が当たっていないということだ。少し不安が軽くなった。

菊水山が10時40分着。最大の難所、摩耶山のふもとの桜茶屋に13時50分。トレーニングの時より30分遅い。しかもその登り道で、何度も両脚がけいれんを起こしていた。芍薬甘草湯という漢方薬を2袋飲み、なんとか立ち往生は回避して登り続けた。

摩耶山は2時半着。予定よりやはり30分遅れ。結局最後までペースは上らず宝塚着は夜9時過ぎ。所要時間は、予定より1時間以上遅い15時間45分だった。

2000年から参加し始めた全山縦走大会。10回目の全山縦走を、ヘロヘロになりながらも何とか完走できたのは、毎朝の山歩きや全山縦走路のトレーニングを、重ねてきた成果、とそれからもう一つ職員の皆が書いてくれた激励の寄せ書きのおかげだと思う。

最近、山と渓谷社発行の「山岳遭難の教訓」や「ドキュメント気象遭難」(いずれも羽根田治著)を読んだ。その中に「幾度となく通いつめ、すみずみまで知っているつもりのコースであっても、天候次第では全く知らないも同然のコースに変ってしまう。季節に関係なく、どんな山であれ」とあった。 

今回の縦走の日が、天気予報通り朝から冷たい雨で気温も低かったら…。無謀な山歩きになって、3年前と同じく途中で動けなくなっていたろうと思う。

油断や慢心を戒めながら、これからも山歩きを楽しみたいと思う。 

ますむら医院 院長・増村 道雄

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